日本人に増えつつある血管障害「脳出血」は、死に至る危険性のある重篤な疾患です。
脳の血管が破綻し、脳機能に甚大な影響を与える脳出血は動脈硬化などと同様に日本人の死因の上位に数えられます。
ここでは脳出血の概要と治療法・予防法などをまとめ解説しています。
脳出血とはどんな病気?
「脳出血」とは、”脳卒中”の一つであり、その他にはくも膜下出血・脳梗塞などがあります。
脳内の血管が脆くなって破綻し、そこから出血してしまう危険な疾患なのです。
脳卒中は日本人の死因の上位にある疾患で、脳出血はすべての脳卒中の2割を占め、かつては日本人の死亡率の1位でしたが、近年生活習慣病予防検診やメタボ検診の普及によって3位にまで低下しています。
しかし、人口の高齢化が進んだことによって、またその数が増えつつあるのです。
脳出血の症状
脳出血は、脳内の血管が破裂することで起きる病気ですから、出血した部位によって現れる症状も違います。
こういった限定的な症状の少ない病気の怖いところは、自己判断がしずらいことです。
また、脳出血の発症は突然起こります。
それまでは日常的な生活ができている状態ですので、職場にいたり外出先、あるいは車の運転中などにも発症することがあるのです。
ただし、脳出血は日中の活動時間に起こることがほとんどです。
日中の活動時間は体温や心拍数も高く、血圧も高いことが理由です。
脳出血の予兆
医療関係者でもなければ判断は難しいのですが、脳出血の発症前後には次のような症状が現れます。
脳出血の発症前後で起こる症状
- いつもないような頭痛がする
- 嘔吐する、嘔吐感がある
- 体の一部に麻痺が見られる
- ぼーっとするような意識障害が起きる
- 目の動きに異常が見られる
- 歩きにくくなる
- 箸やペンなどが使いづらくなる
脳出血はなぜ起きるのか?
脳出血は「高血圧」が原因になりますが、ではなぜそういった体質になってしまうのでしょうか?
以前まで脳出血は親族内で複数発症しやすいことから「遺伝」が疑われてきました。
しかし最近の研究でそれが誤りであることが確認されています。
親族内で脳出血患者が多く発症する理由は、生活習慣や食生活が似ていることが理由なのです。
子供は自立するまで親と同じ食事を摂っていることが多かったり、また睡眠時間など一日のタイムスケジュールが似る傾向にあります。
その生活習慣の中に、血管障害を起こすような要因が含まれていると、親が脳出血を発症すれば、子供にもそのリスクがすでに存在していることになるのです。
脳出血が起きるしくみ
脳出血は、脳の中にある細い血管が、脳梗塞や血管自体の老化・損傷によって弱り、そこに高い血圧がかかることで破裂して出血することで起こります。
脳機能を維持するためには、血液から運ばれてくる酸素や栄養素、その他の血液内成分が必要ですから、出血することによって血液の運搬が不十分になると著しいダメージを受けることになるのです。
出血の量が多かったり、治療が遅れたりすると、出血した周辺の部位が「壊死」することもあり、大きな健康被害をもたらされることになります。
脳出血の原因は高血圧?
脳出血の原因の6割ほどが「高血圧」だと言われています。
高血圧は、生活習慣病の中でもさまざまな循環器疾患を引き起こす要因として危険視されている症状で、脳出血以外にも脳梗塞や心筋梗塞などの直接的な原因ともなります。
高血圧が原因の脳出血を「高血圧性脳出血」と呼びます。
高血圧ではなくても、糖尿病や脳梗塞などで、著しく血管が損傷している場合には、脳出血のリスクが高くなります。
脳出血・高血圧のリスクを高める生活
では、生活習慣の中で、どういったものが脳出血や高血圧を引き起こす要因なのでしょうか?
以下を参照してみましょう。
脳出血・高血圧のリスクを高める要因
- 睡眠不足、夜更かし
- ストレスや過労
- 運動不足
- 肥満
- 塩分の摂り過ぎ
- 偏った食生活
- 多量の飲酒癖
- 喫煙
これらはすべて、生活習慣病やメタボリック症候群のリスクを高める要因と同じものです。
生活習慣病予備軍と言われている人のほとんどに、脳出血の可能性が潜んでいると考えて良いでしょう。
脳出血の治療
救急隊によって病院に搬送されると、専門医によって早急な対処が行われ、頭部CTによる検査後に施術方法の選択がされます。
脳出血の外科手術には次のようなものがあります。
1.開頭血腫除去手術
頭蓋骨を開頭して外し、出血した血液を除去します。
2.定位血腫除去法
頭蓋骨に穴を開け、CTで内部を見ながら管から血液を吸引し除去します。
3.内視鏡下血腫除去手術
内視鏡を使って血液を取り出す方法です。
4.内科治療
脳出血が軽度、あるいは未出血の場合には、降圧剤を用いて血圧コントロールし、出血を予防します。
内科治療は外科手術の後にも再発予防のために実施されます。
その他の疾患(動脈硬化など)、出血とは相反する性質のある病気がある場合にはバランスを考慮し投与する治療薬を調整します。
脳出血の対処と治療
かつては、脳出血を含む脳卒中は「発症したら動かしてはいけない」と言われていましたが、現在それは否定されています。
脳出血は突発的に発症し、しかも緊急性を要しますから、発症したときには、まずは救命センターへの通報が第一です。
嘔吐などがある場合には、吐瀉物によって気管が詰まり窒息するのをさけるために、速やかに清掃して体を横向きにして救急隊を待つことが大切です。
嘔吐がなくても体を横向きにすることで気道を確保することができるので、これは脳出血が起きた場合の一般の人ができる数少ない対処の一つだと言えます。
また、自ら脳出血の予兆や体調の異変を感じたら、迷わず脳出血の専門医がいる病院を受診しましょう。
術後のリハビリ
脳出血は治療によって命をとりとめたとしても、その後に「後遺症」が残ることがほとんどです。
脳出血による脳血管の損傷は一生復活することはありませんが、早期のリハビリによって、日常生活に支障のないレベルにまで身体能力を取り戻せるケースが多いのです。
脳出血のリハビリ内容
- 立ち上がりや歩くことなどの運動トレーニング
- 箸やスプーンを使う、日常の動きなどの作業トレーニング
- 話す、食物を飲み込むなどの言語・飲食トレーニング
脳出血発症後のリハビリは、半年まで最も効果があるとされ、それを超えるとリハビリ効果が下がっていきます。
病院でのリハビリに加えて、自宅での個人トレーニングをすることも大切です。
脳出血の予防のために
脳出血の予防は、動脈硬化や心筋梗塞などの生活習慣病とほぼ重複します。
特に「食生活」「運動」「ストレス」の3つの要素が大切で、いかに血液と血管を汚さない生活を心がけるかが大切なのです。
特に多くの方が暴飲暴食・飲酒・喫煙などの食生活によって血管障害を招いています。
摂取カロリーや味の濃い食べ物などを控え、適度な運動を取り入れることができれば、脳出血を予防することは可能なのです。
また、飲酒・喫煙の習慣もなく、食生活にも気を使っている人が生活習慣病のどれかになってしまうことも増えているようです。
この場合の原因の多くが「ストレス」だと考えられます。
現代は”ストレス社会”などと言われていますが、長期間に渡るストレスを抱え込むと、自律神経のバランスが崩れて血管が収縮して高血圧や糖尿病を発症するケースが増えているのです。
肉体的な生活習慣を改善するとともに、ストレスの解消も同時に考える必要があります。
米国では脳出血の予防のために・・・
- FACE・・・顔の麻痺
- ARM・・・腕の麻痺
- SPEECH・・・言葉が出ない、ろれつがおかしくなる
- TIME・・・発症した時間帯
この4つの頭文字をとって『F・A・S・T』と名付け、警告サインの確認を広く呼びかける運動をしています。
まとめ
脳出血は予兆も少なく発症しても判断がしずらい血管障害です。
ただし、予防の難易度はそれほど高くはありません。
定期的な健康診断を行っていれば、検査から得られる数値によってリスクレベルを知ることはたやすいのです。
医師の指導に沿った生活習慣の改善を心がけることで、脳出血を予防することが可能です。