血管障害の中でも死亡率が高く、生活習慣病の一つとして危険視されているものに「大動脈瘤」があります。

心臓から拡散している複数の血管の中の最も太い動脈の一つで、ここに”瘤(こぶ)”ができ、最悪の場合には破裂していまう疾患です。

現在大動脈瘤患者は増加傾向にあります。

取り返しのつかない結果を招かないためには、ある程度疾患の知識を持っておくことが大切です。

ここでは大動脈瘤がどんな性質を持つ血管障害なのか?また種類や治療法などをまとめました。

大動脈瘤とはどんな病気?

診察

「大動脈瘤」は心臓の左心室から伸び、全身に血液を送る大切な血管の部分に瘤ができ、さまざまな障害をもたらす症状です。

大動脈に瘤ができて膨張してしまうのは、血管壁にコレステロール脂肪物質などが付着することが理由です。

これは”動脈硬化”と同じ過程で出来上がります。

大動脈瘤は、現在多くの患者数がいるといわれ、社会の高齢化などの原因も加わり年々その数が増えつつあります。

生活習慣病の中でも死亡率の高い疾患として、専門家からも危険視されている要注意疾患の一つです。

大動脈瘤が発見されたらすぐに治療が必要になり、放置してしまうと死亡率は時間の経過とともに高まってしまうのです。

大動脈瘤の悪化で最悪の事態に

最悪の事態

大動脈にできる動脈瘤は、何らかの治療的処置をしないと悪化することを避けられません。

大動脈にできる瘤は一度膨れ始めると加速して大きく拡張し、進行が進むと大動脈の血管壁を引き裂くほど巨大化してしまい、大動脈破裂という最悪の事態を招きます。

大動脈は心臓から全身に血液を送る、「血流の要」ですから破裂してしまうと生体機能がストップしてしまうのです。

発見が遅れがちな大動脈瘤

砂時計

大動脈瘤は、動脈瘤が膨れ上がって血管を引き裂いてしまうまで、症状らしい予兆を実感できないという怖さがあります。

軽い体調の変化として「呼吸がしずらくなる」「声が枯れる」「食べ物が飲み込みにくくなる」といったものがありますが、こういった症状を感じても、それが大動脈瘤に起因していることを気づくのは難しいのです。

大動脈瘤から動脈破裂する最悪のフロー前に、運良く発見して手術を開始できる人は、定期的な検査を行っている人だけだといえるのです。

大動脈瘤には複数のタイプがある

大動脈瘤は広範囲な疾患に対する病気の総称であり、がんなどと同様に一括りにできない難しさがあります。

血管に対してどのような性質の瘤ができてしまうかの違いによって、病気の深刻さにまで差が生まれますし、大動脈のどの部分にできるかでも危険性や死亡率、治療方法なども異なるのです。

大動脈瘤の形状の違い

3つの違い

大動脈瘤形状によるタイプの違いを覚えておきましょう。

真性

「真性大動脈瘤」は、動脈の内側の血液が通る部分に瘤ができるタイプの大動脈瘤です。

大動脈は「内膜」「中膜」「外膜」という3つの層がラミネートのように重なり”血管壁”を作っています。

真性大動脈瘤はその最も内側に瘤がポッコリと現れ、徐々に膨らんでいく症状です。

仮性

「仮性大動脈瘤」は、動脈の外側に漏れ出した血液が血管の外側に付着したかたちで瘤を作ります

動脈が劣化しているところが裂け、その部分に瘤が付着した状態ということで、真性タイプよりもはるかに危険性が高く早急な治療が必要になります。

解離性

「解離性大動脈瘤」は、「大動脈解離」とも呼ばれています。

動脈壁の内膜と中膜の2つの層を突き破った動脈瘤が、外に流れ出ずに中膜と外膜の間に溜まって瘤を作るタイプです。

解離性動脈瘤は、瘤が大きく血管の層の間を浸透するように成長していきます。

出血の危険性だけでは終わらず、大動脈やそこから枝分かれしている血管を圧迫してしまうのです。

生命維持に重要な臓器に流れる血液を止めてしまうといった弊害も起こります。

瘤ができる場所にもよりますが、一般的に大動脈解離が起きてしまうと、1時間経過するごとに死亡率が1%ずつ上昇するともいわれ、緊急性のある状態に陥ることになるのです。

大動脈瘤のできる場所による違い

大動脈

大動脈瘤は瘤がどの場所できるかによっても疾患の種類や名称が違い、それぞれ緊急性や治療方法が異なります。

大動脈は心臓の左心室の上部にある人体の血管の中で最も太い動脈で、英語記号符の「?」の頭の部分のような形状をしています。

一般的に「?」の上部に行くほど危険性が増し、下降して下に行くほど危険性は下がります。

上部から下部へ、次のような順に瘤のできる場所別に大動脈瘤の名称が区別されているのです。

  • 弓部大動脈瘤
  • 上行大動脈瘤
  • 大動脈基部拡張症(弁輪拡大症)
  • 下行大動脈瘤
  • 胸部大動脈瘤
  • 腹部大動脈瘤

大動脈の上部には、そこから脳や肺などの生体活動の雄心的役割のある臓器へと枝分かれしています。

ここに疾患が現れると、それら臓器への影響から重篤度が高まるのです。

また、大動脈破裂は予兆がほとんどなく突然胸や背中に激痛が起こり、重篤化するといった現れ方をします。

このとき一刻の猶予もなく、すぐに手術を受ける必要があるのです。

大動脈瘤の治療

3つの選択肢

大動脈は破裂すると一気に危険性が高まるために、定期的な検診を心がけ、少しでも早い治療をすることが大切です。

大動脈瘤の中でも最も危険な大動脈解離では、緊急手術では約半数の患者が死亡してしまうのです。

大動脈瘤と明確に判断できる診断方法はCT検査や、MRI検査があり、これらの方法で大動脈瘤を見つけると主に3つの治療法が必要になります。

内科治療

薬剤投与

軽度な大動脈瘤には「内科手術」を用いることがあります。

薬剤によって血圧をコントロールしたり、瘤が拡大していくのを阻害するような薬剤を投与するのが一般的です。

しかし、大動脈瘤治療において、内科治療は補助的・予防的なもので、早期に疾患が発見され、さらに場所や症状に緊急性がない場合に選択される治療法だといえます。

人工血管置換

外科手術

大動脈瘤が重度ですぐにでも手術をしなくてはならない状況では、外科手術(人工血管置換)を行います。

胸部や腹部を切開し、一度血液の流れを体外に逃がして人工心臓による血流を重要臓器に流したり、人工肺から酸素を補給しながら人工手血管を装着します。

「人工血管」とはポリエステル(ダクロン製)や樹脂(ゴアテックス製)といった素材で作られ、動脈瘤を切除した場所に装着することで失われた血管の機能を取り戻します。

日本の人工血管置換手術の成功率は高く、術後の死亡率は10%~20%だといわれています。

ただし、全身麻酔に耐えられるだけの体力と抵抗力が必要になるので、高齢になるほど手術適応が難しくなるという側面もあります。

ステントグラフト内挿術

治療法

大動脈瘤の治療法で最も新しく安全性の高いものに「ステントグラフト内挿術」というものがあります。

足を小さく切開し、そこからカテーテルを用いて動脈瘤ができた患部にまで通し、そこにステントグラフトという金属のバネがついた特殊な人工血管の一種を挿し入れて治療します。

ステントグラフトは外科手術に用いる人工血管とは違い、血管の内側に固定するだけのものです。

瘤自体はそのまま残りますが、血流がなくなるためにそれ以上瘤は拡張せず小さくなり、破裂の危険性も格段に下げることができるのです。

手術時間も短く、麻酔も局所で済むために身体への負担は非常に小さくて済むので、外科手術に耐えられないような高齢の方にも問題なく施術することができます。

まだ開発されて間もない治療法なので、術後何年治療効果が持続するかは統計できていませんが、メリットが多く現在最も注目されている大動脈瘤治療の方法だといえます。

大動脈瘤を引き起こすもの

生活習慣病

大動脈瘤は他の病態から悪化した結果だともいえます。

生活習慣病に例えられるさまざまな血管障害循環器疾患などを予防・治療することで、発見の難しい大動脈瘤を防ぐことができるのです。

大動脈瘤の予防は、動脈硬化の予防と多くの要素が共通しています。

以下のような原因要素を避けることで大動脈瘤の予防ができるのです。

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 高脂血症
  • 肥満
  • 過度な飲酒
  • 喫煙
  • 運動不足

これらの疾患や生活習慣の改善に加え、定期的な検診を習慣にすることで大動脈瘤の予防になります。

まとめ

大動脈を含む血管の硬化現象(老化)は、健康に自信がある人でも見えないところで進行しています。

とくに発症率が高くなる60歳以上の方は、現在健康に不安がなくても健康診断を習慣づけることが大切です。

がん検診などに加え、動脈硬化の状態を定期的に検診しておくことで大動脈瘤の血管破裂という最悪の事態を防ぐことにつながるのです。