私たち人間の体には血液が流れており、血液が流れていることで生存することが出来ているのです。
そして、その血液が流れるための通路が血管であり、全身に至るところに張り巡らされた血管が様々な臓器に血液を循環させて栄養を送り届けています。
ちなみに血管の長さは地球の2周半くらいの長さがあり、総面積がテニスコートの6面分もあると言われています。
また、血液の総重量は体重の約8%を占めているとも言われており、体重が60kgの人だと血液が5Lも体内を流れているという計算になります。
1リットルのペットボトル5本分もの血液が体内に入っているなんて驚きですよね。
そして、これだけの血液を運搬しているのが血管なのです。
今回は血管の種類や構造についてご紹介していきたいと思います。
血管は大きく分けて3種類
血液は心臓を起点として体内を循環しているのですが、血管には大きく分けて、心臓から送り出された血液を全身に届ける働きをする「動脈」、各臓器からの血液を心臓に送り出す「静脈」、そして身体の抹消部分に存在している毛細血管の3種類があります。
動脈と静脈にはたくさんの種類がある
動脈と一言でいってもいくつかの種類があり、心臓の周りを取り囲むように張り巡らされている「冠状動脈」、腎臓に血液を送っている「腎動脈」、鎖骨から腹部に至る「内胸動脈」、そして静脈からの血液を心臓に送り出す「肺動脈」等、たくさんの種類の動脈が存在しており、さらに細かく分類されているものも全身に多数分布しています。
また、静脈にもたくさんの種類があり、例えば舌に張り巡らされている「舌静脈」、脳や顔面、頸部の血液を集める「内頚静脈」、肺から心臓に血液を送る「肺静脈」等、部位によって様々な呼び方があるようです。
毛細血管については後述していますのでご確認ください。
動脈と静脈の血管の違い
それでは、動脈と静脈の違いは何なのでしょうか?
動脈も静脈も3層構造になっているのは同じですが、動脈には強い圧(血圧)がかかるため動脈の壁は血管の中でも厚く出来ており、反対に静脈の壁は薄くなっています。
また、動脈の血管にはありませんが、静脈の血管には血液やリンパ液の逆流を防ぐための弁がついており、血液が心臓の方向に流れるときは便が開いて逆流を防ぐといった働きを持っています。
ちなみに、この弁に障害が起こると下半身に血液が溜まってしまい、静脈瘤等の血管の病気を引き起こしてしまいます。
血液が血管を流れる仕組みとは
血液が流れる仕組みには、「体循環」と「肺循環」と呼ばれるものがあり、心臓から出た血液が動脈を通って老廃物や二酸化炭素を回収して静脈から心臓に戻ることを「体循環」と呼んでいます。
そして、心臓に戻ってきた血液は肺動脈を通って肺に行き古い酸素と二酸化炭素を新しいものに交換して再び心臓に戻るのですが、この経路を「肺循環」と呼んでいます。
つまり、体循環では心臓から出た酸素を豊富に含んだ血液が動脈を流れていき、肺循環では古くなった酸素や二酸化炭素等の不要なものを含んだ血液が静脈を流れているということです。
これが血管を流れる血液(血流)の仕組みとなります。
ちなみに、体循環にかかる時間は約20秒、肺循環にかかる時間は約3~4秒くらいだと言われています。
血管の構造はどうなってる
血管には3種類あるとお伝えしましたが、動脈と静脈の構造はどちらも「内膜」、「中膜」、「外膜」の3層になっているところは共通です。
毛細血管の構造については後程ご紹介します。
外膜は血管の外側を包んでいる膜で、血圧に耐えれるような強固な結合組織から出来ており血管を保護する役割を果たしています。
中膜は平滑筋細胞と、コラーゲンが主な成分である弾性繊維で構成されており、血管の収縮や弛緩が主な役割で血管にかかる圧力を受け止める働きをしています。
そして、内膜は内皮細胞から出来ている膜で、一酸化窒素(NO)やエンドセリン等の物質を分泌しており血管のしなやかさを保つ重要な働きをしています。
また、内膜は血管の弾力性を保つだけでなく、血液が固まってしまうのを防ぐ役割も持っており、内皮細胞が傷ついたり機能が低下することで血管が老化し、動脈硬化を引き起こしてしまいます。
さらに、内膜の中を流れている血液が流れている空洞を内腔と呼んでいますが、動脈硬化等により内腔が狭くなることで血栓ができやすくなり、プラークが血管を詰まらせて心筋梗塞や脳梗塞等の血管の病気を引き起こしてしまうのです。
毛細血管の構造とは
毛細血管は細動脈と細静脈の間を走っている非常に細かい血管のことで、物質の透過性に優れていることから、血管の壁を通して各臓器や組織間での物質交換を行っています。
また、毛細血管は構造の違いによって大きく3種類に分別されています。
1つは「連続型毛細血管」と呼ばれるもので、最も一般的な毛細血管であり脳をはじめとして、全身の至るところに分布しています。
連続型毛細血管は透過性が低いのが特徴で、血管の壁が密着結合と呼ばれる構造になっていることから物質交換が制限されています。
2つめは「有窓性毛細血管」と呼ばれるもので、連続型毛細血管よりも透過性が高く、物質交換が頻繁に必要となる腎臓等の臓器に多くみられます。
そして、3つめは「不連続型毛細血管」と呼ばれるもので別名「洞様毛細血管」とも呼ばれています。
非常に透過性が高く、内皮細胞の隙間が大きいため、大きな物質でも細胞間を通過することが出来るのが特徴で、内腔が大きいため血液がゆっくりと流れるのも特徴で、肝臓に多く分布しています。
以上のことから、毛細血管は場所によって構造が異なり、それぞれに臓器に適した物質交換が出来る仕組みになっているということがお分かりいただけたのではないかと思います。
ちなみにこれほど複雑な仕組でも毛細血管の直径は5~10μくらいと動脈や静脈と比べて非常に小さく、肉眼では確認できないサイズなのです。
おわりに
血管は人が生きるために必要な酸素や栄養素を運ぶ重要な役割を果たしており、血管に障害が起こることで様々な病気を発症してしまったり、時には生命にかかわることも少なくはありません。
普段意識することのない血管の構造ですが、どのような仕組みで血液が体内を流れているのか、どれほど重要な働きをしているのかを知ることで健康に対する意識が変わるかもしれません。
最近では欧米化の食生活や生活スタイルの変化によって、若い人でも血管の病気になる人が増えてきています。
血管は年齢と共に衰えていきますが、食生活を変えたり、適度な運動を取り入れたりすることで血管の衰えを予防することは出来るので、血管の重要性を再認識して体の中から健康を目指しましょう!