血液の色が赤いのは誰しも知るところですが、血管から透けている血の色を見ると「青色」をしています。
それはいったいどういった理由からなのでしょうか?
血管が青く見えるのは、血液内に含まれる成分や光の性質などが複雑に関わっています。
ここでは、人間の血管の色がなぜ青く見えてしまうのかを掘り下げて解説していきます。
血液は赤いのに血管が青く見える謎
私たち人間の血管の中に流れている血液は、もちろん「赤色」です。
心臓から送り出された直後と全身を駆け巡った後では、少し透明度に違いがあるものの、やはり「血は赤い」のです。
しかし、皮膚から透けて見える血管の色は何だか”青い色”をしています。
また、血管自体も肌色の臓器ですから、青い色が血管そのものの色というわけではありません。
血管が青く見えるのには、いくつかの特殊な原因が重なっているのです。
血が青いのは光の成分が原因?
私たちの身近にある太陽や蛍光灯などの光の中には「光の三原色(RGB)」という光の成分が含まれています。
「R=レッド」「G=グリーン」「B=ブルー」ですね。
この三原色の配合で、どんな光の色でも作ることができます。
ちなみにあのノーベル賞で話題になった「青色LED」ですが、あれは青色のLEDが作ることができなかったので色の混色ができず、昔はオレンジや緑のLEDしか作れなかったのです。
それが青色LEDが発明されたことで、光の三原色「赤・緑・青」がすべて揃い、どんな色でも作られるようになったというのが、あの大発明の真価です。
「白色の光」を作るのにもまた青色が必要になり、私たちの身近にある照明や太陽の光の成分の中にも青色が含まれているのです。
そして、血管が青色に見えるのは、この光の三原色が深く関係しています。
血液の色は赤色ですので、白い光を当てたときに”血液に赤色成分が吸収”されてしまうのです。
すると残りの光の中の成分である緑や青が際立って、ぼんやりとした「青色」に見えるというわけです。
光の波長で血管が青く見える?
光の中の色成分RGBは、それぞれに”波長”が違います。
赤は700nm(ナノマイクロ)、緑は546nm、青は435nmです。
この波長の長短で「物質を突き抜ける力」が違います。
波長の長い赤はより深く皮膚を突き抜けて皮膚内に侵入しますが、波長の短い青は皮膚表面で跳ね返されてしまいます。
セラミックなどから発せられる「遠赤外線」というさらに波長の長い光は、体の深部にまで届くので、よく体が温まるという例えで理解してもらえるはずです。
こういった光の波長の性質から、白い光を皮膚に当てると、赤色だけが真皮層にある血管に届くので、血管を照らすことができるのです。
光の性質を使って役立てられていること
普段私たちは照明器具で何気なく「光」を利用していますが、血管に関することでこの光の性質が役立てられているところはたくさんあります。
次のようなものは、光の性質を使った非常に役立つ技術だと言えるでしょう。
医療にも「光」が使われている
人の体質によっては血管が皮膚の奥にあり、表面から見つけにくい場合があります。
ゴムチューブで血管を圧迫して浮き上がらせても、見づらい人はたくさんいるのです。
たとえば注射をするときなどは、血管が見つからないと困りますよね?
そこで「光の性質」がうまく使われているのです。
皮膚に特殊な波長の赤色を照射すると、その光の成分は皮膚を突き抜けて血管にまで届きます。
そうすることで血管の輪郭が浮き上がるように鮮明に見え、注射の針で狙いやすくなるのです。
米国ではドラッグ予防にも・・・
米国ではドラッグが蔓延し深刻な社会問題になっていることはみなさんご存知なはずです。
公衆トイレなどでも注射器を使ってドラッグを使用するケースが頻繁しているのです。
こういった状況を少しでも改善し、街の治安を向上させるためにも光の技術が使われています。
それはトイレ内の照明の色を「青色」にすることで、街なかでのドラッグ使用に歯止めをかけるという取り組みです。
青色は真皮層にまで届かず、皮膚表面で跳ね返されてしまいますから、血管の場所まで光が届きません。
そして、薄っすらと見えている血管も、同じ色の青色の光が当たることで、さらに判別しずらい状態になるのです。
血管を見つけることができないために、麻薬中毒患者はトイレでのドラッグの使用を断念してしまうというしくみです・・・。
血液の色は動物によって違う?
ここまで血液と血管の色、そして光との関係性について解説しましたので、さらに進んで「血液の色」について掘り下げてみましょう。
何気なく「血は赤い」と思っていますが、それには科学的な理由がちゃんとあるのです。
血が赤いのは鉄分が関係している
血管の中を流れる血液の成分の中では「赤血球」という物質が大きな働きをしています。
赤血球は、血液を使って「全身に酸素を運ぶ」という生命維持に欠かせない役割があるのです。
そして、この赤血球は、”ヘモグロビン”というタンパク質でできていて、このヘモグロビンには「鉄分」が多量に含まれています。
よく貧血を起こす人が「鉄分不足が原因」と言われますが、体内で鉄分が不足するとヘモグロビンが正常に働かなくなるのです。
ヘモグロビンは酸素の運搬が仕事ですから、鉄分が不足してしまうと酸素を全身に供給することができなくなり、貧血症状を起こしてしまうというメカニズムなのです。
――鉄が錆びると赤褐色になります。
”錆びる”という現象は、酸素と結合した”酸化”だということは、みなさんご存知なはずです。
ヘモグロビンには「鉄と酸素」が同居している状態ですから、常に酸化状態が起こり、それによって「血液は赤い」という現象が起きているというわけです。
「血が赤い」は絶対ではない?
「血の色は赤」ということはもはやどんな人でも知る常識ですが、実はすべての動物の血液が赤いわけではないのです。
爬虫類・魚類・甲殻類・昆虫にも血液がありますが、色は赤とは限りません。
血球の違いで血の色が変わる
犬・猫・鹿・牛・鳥類・魚類など多くの動物の血液は、人間と同じヘモグロビンを含む赤血球があるので赤い色をしています。
これは前述したように、「鉄分」によってヘモグロビンが作られているからでしたね。
しかし、地球上の動物の中には「青」や「緑」といった血液を持つ動物たちも存在するのです・・・。
「青い血」をもつ動物たち
地球上には「青い血」を持つ動物もいます。
それはタコやイカなどの軟体動物の仲間に多く見られます。
こういった青い血液は、人間でいうところの”ヘモグロビン”の代わりに「ヘモシアニン」という物質が酸素を運んでいるのです。
「ヘモシアニン」の”シアン”は青い鉱物のことで、三原色の「シアン」を表す色素です。
ヘモシアニンはヘモグロビンが鉄で作られているのに対して、「銅」でできています。
銅でできた10円玉などを水に浸けて酸化させると、緑や青っぽく変化しているところを見たことがあるはずです。
青い血もやはり金属が酸化することが色が表れるしくみなのです。
「緑の血」を持つ動物たち
「緑の血」を持つ動物もいます。
トカゲやミミズ・虫類にその仲間は分布しています。
これもやはり酸素を運ぶ血球に「ビリベルジン」という色素成分が含まれ、これも青い血のヘモシアニンと同様に「銅成分」でできています。
血管と血液を使って全身に酸素供給するシステムは似ていても、それに使う金属たんぱく物質が違うことで、血の色は変わってくるのです。
この記事のまとめ
いかがでしたか?
血管が青く見えることや血の色のしくみは、かなり複雑な要素が関係していることが分かります。
今回の解説は、直接血管や血液の病気に関係するものではありませんが、血管や血液の基礎知識として専門用語などを覚えておくと、これから医学系の解説を読むのに役立つこともあります。
血液は人間の健康を考える上でとくに注意が必要な生体物質です。
血管と血液のことを深く知ることで、適切な健康法を学べることにもつながるのです。