最近、下肢静脈瘤の手術で入院したという人の話をよく聞きます。
命に関わるような病気ではないと言われていますが、症状を実際に見て不安に感じる人も多いようです。
どんな病気なのか、またはどんな治療法があるかなどご紹介します。
下肢静脈瘤とはどんな病気?
下肢静脈瘤は足の血管が膨れて、コブのようになり、外見的にも見苦しい状態になる病気です。
そのまま放置しておいても日常生活にそれほど大きな問題が急に起きるわけではありません。
しかし、擦り傷、打撲などは日を追うごとに治りますが、この病気は自然に治るということはありません。
症状的にはあまり難しい病気ではありませんが、症状が出ると見た目が見苦しい感じは避けられないので病気に罹った当の本人は気にして憂鬱な気分になる場合もあります。
誰でも健康的なきれいな足が理想です。
どんな症状が出るの?
この病気の名前の根拠にもなっているように、足の血管が膨れて浮き出てしまいます。
それと同時にふくらはぎがだるかったり痛みなども伴います。
また、足が浮腫んで、その箇所を指で押しても戻らず、あたかもゼリー状の物質や糊が溜まっているかのように、皮膚に本来あるパ―ンとしたハリがなくなります。
その他、浮腫みが原因で靴下のゴムの痕がクッキリとついたり、いつも丁度いいサイズの靴がきつくなったり履けなくなったりします。
この浮腫みの症状は様々の病気が原因で起こる浮腫み同様、長時間の立ち仕事や足を下げて同じ姿勢でいた時など疲れが溜まった時に顕著に現れます。
時間的にも昼以降、夕方に症状が顕著に見られます。
その他、この病気がひどくなってくると寝ている時、特に明け方に布団の中で急に足がつって、いわゆるこむら返りになりびっくりすることもあります。
足の皮膚の外見的な症状としては、湿疹や皮膚炎を起こしたり、くるぶしの色がどす黒くなります。
ひどくなると皮膚が破れて潰瘍になったり出血するまでになる場合もあります。
下肢静脈瘤になる原因とは?
下肢静脈瘤は足の血液の流れに不具合が起きる病気です。
静脈とは、動脈によって運ばれた酸素や栄養が使われた後の血液を心臓に戻す血管のことです。
下肢の静脈は大きく分類して筋肉の中を通り抜ける深部静脈と、皮膚に近い部分を通る伏在静脈の2通りに分けられます。
この病気になると下肢の血管に血液が滞ってしまいます。
この様な状態になる原因には深部静脈閉塞と伏在静脈、交通枝(深部静脈と伏在静脈を連絡する血管)弁逆流の2つのケースがあります。
深部静脈閉塞は血の固まりが詰まって足全体が腫れあがってしまい、足の血液はすべて伏在静脈を通る状態になります。そのため伏在静脈に負担がかかり拡張してしまいます。
伏在静脈、交通枝弁逆流は足の血液が重力と反対方向の心臓とに向かって流れやすいように弁が付いているのですが、その弁がうまく働かなくなった場合に起きます。
そうすると血液は足に溜まって、伏在静脈が静脈瘤となってしまうのです。
これが足の外観からも見ることのできるいわゆる下肢静脈瘤です。
この弁が壊れる原因は妊娠、出産、長時間体を動かさない立ち仕事、または遺伝的要素などがあるといわれています。
「下肢静脈瘤かな?」と心配になったら病院のどこの科を受診すればいいのでしょうか?
下肢静脈瘤の症状に気づいたらまず、病院に行って診察を受けてみましょう。
その場合、どこの科を受診すればよいのか迷う場合があります。
この病気は血液の流れに異常が起きる病気ですから心臓血管外科や血管外科で診ていただくのが理想ですが、まずは循環器内科や皮膚科、形成外科などを受診して相談し専門医を紹介してもらうといいでしょう。
どんな検査で診断できる?
まず、気になる症状が本当に下肢静脈瘤であるかを見極める必要があります。
足の外観を観察した後、血流の音を聞くことができるドプラ聴診器を使用して血流の異常を調べます。
次に超音波検査で、静脈の異常を検査したり、脈波検査で下肢の精脈の働きを測定します。
このような検査で症状が重篤と判断された場合は、静脈造影やCT検査、MRI検査を行ってさらに調べるケースもあります。
治療法や手術について
まず、初歩的な治療としては、長い時間の立ち仕事や座りっぱなしの状態を避けたり、重力の関係でどうしても足の下の方に溜まりやすい血液を溜めないように足を上げた状態の時間を取るなど日常生活で注意できる点を改善します。
また症状の悪化を防ぐために開発された弾性ストッキングを履く圧迫療法も行います。
弾性ストッキングとは弾力性がある特別なストッキングのことです。
これを履いて締めつけることによって下肢の静脈還流を良くすることができます。
足関節付近の圧迫圧が高く、上に向かうほど徐々に弱くなるような構造になっています。
これにより足先から心臓への血液の戻りを助けて、うっ血症状を改善するのです。
ストッキング型やハイソックス型等、様々な型やサイズがあり、個人個人の体格や症状に合わせて使用します。
着脱などの使用法や注意点など難しい点もあるので、病院でしっかり指導を受けることが、静脈瘤の痛みやだるさや浮腫み、皮膚炎などの症状の回復により効果的です。
硬化療法は硬化剤を注射し静脈瘤に入れて、静脈を塞ぐ手法です。
細くて小さな静脈瘤に施される方法で外来で受けることができます。
血液の逆流が強い場合は手術になることがあります。その手術とは、逆流している静脈を引き抜くストリッピング術や静脈を縛る高位結紮術があります。
また、最近注目されている手術にレーザーによる血管内治療があります。
膝付近の静脈にレーザーファイバーを通して、足の付け根まで入れて静脈を焼灼して閉塞させる手法です。
下肢静脈瘤の治療法としては、血液の逆流を治療するためのストリッピング手術とレーザー治療、瘤を取り除くための静脈瘤切除術と硬化療法の4つがあります。
逆流の治療と瘤を除去する治療の両方を組み合わせて行うことによってより完璧な治療ができます。
いずれにしても治療法はいろいろあってメリットも違うので患者さんの症状や程度、希望、活動状況を考えながら行います。
下肢静脈瘤を予防する方法は?
下肢静脈瘤にならないために、またすでに症状があってもそれ以上悪化しないために日常生活において次のような注意をしましょう。
まず長時間の立ち仕事や足を動かさないことがこの病気には一番よくないので、適度な運動を意識して取り入れるようにします。
立ち仕事でも動かないのは特によくありませんし、デスクワークが多い人も休憩は意識して取るように心がけましょう。
また足に汚れた血液が溜まる病気ですので、足を高くして睡眠を取ることも効果があります。
足を動かさないことも浮腫みの原因となりますので、マッサージをしたり運動をして血液の流れをよくしてこの病気の改善を図りましょう。
足は常に動かす事を意識します。もちろん疲れない程度の散歩も効果的です。
日常生活においても車での移動をなるべく避けたり、階段の利用を増やすなど毎日毎日の地道な努力で、少しでも下肢静脈瘤の不快な症状を改善したいものです。
寝る前や入浴後にも座ってふくらはぎを下から上にマッサージして足の血液を心臓に送る手助けをしてあげましょう。
また、下肢静脈瘤がすでにある人は足を掻き毟って傷をつけないように注意し、清潔にして色素沈着や潰瘍を作らないようにします。
また予防として、医療用弾性ストッキングを履くことも効果があります。
下肢静脈瘤についてのまとめ
下肢静脈瘤は命に関わるような怖い病気ではありませんが、浮腫みやだるさなど不快な症状をなるべく軽減するような日常生活を送りたいものです。
また最近の医学の進歩で優れた治療を受けることができるので専門の病院を受診して医師に相談し健康的な足を取り戻しましょう。