動脈硬化はさまざまな生活習慣病の原因になる非常に怖い血管障害です。
動脈硬化は長期間かけて発症するために治療が難しく時間もかかりますが、運動するだけでかなりの予防効果があるといいます。
日本人の死亡原因のトップにも深く関係する動脈硬化の概要と、運動することで予防できる理由などをまとめました。
動脈硬化ってどんなもの?
「動脈硬化」という言葉はよく聞きますが、あまり詳しいところまで理解している人はいないようです。
動脈硬化とは”病名”ではなく医療用語の一つで、数種類の症状の総称です。
一般的に動脈硬化と呼ばれている症状は、「粥状動脈硬化」と呼ばれるものです。
血管の内側に脂肪やコレステロールが付着しドロドロした状態になり、しだいに「粥腫」と言われるものがコブ状に盛り上がり血流を悪化させてしまうのです。
動脈硬化が血栓を作る
動脈硬化は血流を悪化させるだけではなく、どんどんコブが大きく成長していき、そこに勢いよく血液が流れ込むことで、血管の内側の細胞(内被膜)の一部が剥がれて血管内に流れ始めると「血栓」になります。
血栓は各臓器に流れ込む血管を塞いでしまうと、その部分が「壊死」してしまうことで、大きな病気を引き起こしてしまうのです。
このように、動脈硬化自体は「病名」ではないものの、命にかかわるような大病の直接的な原因を誘導する危険な状態を指します。
現在医療現場で動脈硬化を危険視して注目するのは、こういった理由があるからです。
動脈硬化から引き起こされる病気
血管は人の生命の要でもありますから、そこに障害が起きる動脈硬化は、深刻な循環器疾患の引き金になります。
動脈硬化から引き起こされる病気は、とくに先進国で猛威をふるい、現在の日本人の死因の上位に数えられるなど社会問題の一つにもなっているのです。
〈動脈硬化から引き起こされる病気〉
- 心肥大
- 心不全
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 脳梗塞
- 下肢閉塞性動脈硬化症
- くも膜下出血
- 脳出血
これらを見ると、動脈硬化が健康を考える上で危険視されている理由が理解できます。
現代の日本で健康で元気な体を維持するためには、いかに「動脈硬化にならないか?」ということが大切だとも言い換えれるかもしれません。
近年「生活習慣病」というキーワードをよく耳にするようになりましたが、これも動脈硬化を予防することを主体に考えられていると言っても過言ではないのです。
動脈硬化になってしまう理由
では、なぜひとは動脈硬化になるのでしょうか?
冒頭でも少し触れましたが、0歳時から動脈硬化は始まっていますので、いかに「危険な要因」を毎日の生活の中で排除していくかが大切です。
診断で動脈硬化が見つかる人は、毎日の生活の中でその危険な要因をたくさん持っているということなのです。
以下が動脈硬化につながるような生活習慣や状態を引き起こすものだと考えられています。
〈動脈硬化を引き起こす危険な要因〉
- 肥満
- 喫煙
- カフェイン
- 高脂血症
- 高血圧
- ストレス
- 運動不足
最近では「メタボリックシンドローム」が動脈硬化に非常に大きな影響を与えるものとして危険視されています。
自治体によるメタボ検診の普及を見てもそれは明らかなことです。
これらの動脈硬化の危険要因をまとめると「食生活」「ストレス」「運動」ということになるでしょう。
これらは、経済力の高い先進国が共通してもつ社会問題でもあります。
またこの3つは全く”別の要素”というわけでもありません。
食生活が悪いとストレスに弱くなることもありますし、運動をあまりしない人はストレス解消のチャンスを失い精神疾患にかかりやすくなるといった”相互作用”があるのです。
動脈硬化が運動で予防できる理由
メタボ検診の診断結果が悪い人には、医師は食生活を改善し、運動を生活の中に取り入れることを指導します。
とくに運動は動脈硬化の進行を防ぐ効果があると考えられ実際に数ヶ月指導通り運動を取り入れると症状が改善することが多いのです。
いったい運動にはどのような動脈硬化への抑制の仕組みがあるのでしょうか?
血管洗浄作用がある
動脈硬化は血管壁の内側に脂肪などが付着する症状ですから、この汚れを除去することが予防になります。
運動をすると、心拍数と体温が上昇し、血管の中に勢いよく血液が流れることになります。
このとき、強い血液の圧力がかかり、血管壁に沈着した脂肪やコレステロールが洗い流されるのです。
動脈硬化の予防には脂肪やコレステールの少ない食事を心がけることが予防となりますが、運動はもっとアグレッシブに血管洗浄をすることができるのです。
この洗浄効果は、動脈硬化用の治療薬を超えるといも言われていますので、医師が患者に推奨する理由も頷けるのです。
血糖値の安定作用がある
食事をすると、血管内には糖を含んだ血液が流れます。
その糖質が多いほど「血糖値が高い」ということになりますが、糖を多く含んだ血液は粘度が高く少しドロドロしてます。
食事後にはこの糖を分解するために「インスリン」が分泌されますが、血糖値が常に高い人や膵臓の機能が衰えている人、あるいは糖尿病を患っている人はインスリン分泌が足りず、血糖値が高いままになってしまうのです。
これが糖尿病の人が動脈硬化になりやすい理由です。
これも「運動」をすることである程度改善することができます。
”糖”は体を動かすために使う「エネルギー」ですので、そのエネルギーを消費する運動は糖の消費を早めます。
頻繁に運動をすることで、血糖値が安定することも動脈硬化の予防につながるのです。
ストレスを解消できる
人が精神的なストレスを感じるとき、体内では「活性酸素」という猛毒の物質が発生させたり、自律神経が交感神経になって血管を収縮させてしまい、血液の流れが格段に低下してしまいます。
活性酸素は血液をドロドロにすることもわかっていますから、ストレスも動脈硬化の危険な要因の一つになるのです。
運動をして良い汗を流すと、終わったあとにスッキリとした気分になるはずです。
この「爽快感」は精神の安定に非常に大きなメリットになります。
ストレス障害を起こす人のすべてに大きな悩みなどがあるわけではありません。
最近増えているストレスの病気は、毎日の生活の中で「ストレス解消ができていない」ということの方が原因として多いようですが、その理由に”運動不足”も含まれているのです。
運動をしてストレスを解消すると、自律神経も整ってリラックスした状態を作れるようになります。
リラックス状態になると血管が広がり、たくさん血液が流れることで、血管壁への脂肪やコレステロールの付着を予防する効果もあります。
ほんとうに運動だけで予防できるの?
ここまでの解説で、運動がいかに動脈硬化の改善効果が高いかが理解できたはずです。
しかし、運動をするだけでは動脈硬化を完全に予防したり、改善することは難しいと言えます。
動脈硬化対策には・・・
- 食生活の改善
- ストレス解消
- 運動
の3つをしっかりと意識することが大切なのです。
動脈硬化が進行している人の原因はさまざまで、上記の3つの要素比率が違います。
過度なストレスを受ていることが動脈硬化を進行させているのであれば、運動と食生活の改善をいくら行っても完全に危険な要素を排除しきれないのです。
まずは自分の生活習慣の中で、動脈硬化につながる直接的な要因を見つけ出し、3つの対処方法をバランスよく取り入れることが大切です。
この記事のまとめ
血液と血管から起きる障害の根本的な要因である「動脈硬化」は、一見健康に見える人でも見えないところで進行しています。
動脈硬化は、「悪化するまで自覚できない」性質もがりますので、体調が悪くなる前から予防を心がけることが大切なのです。
「運動」といっても特別なものではなく、ウォーキングや軽めのジョギングで十分です。
デスクワークが仕事で体を動かさない人は、動脈硬化予防のために明日からでも運動を始めることをおすすめします。